ひとつの仕事。無数の未来。
バスから繋がるまちづくりを考え、創る。

バスが進んでいく未来はおもしろい。できることは、まだたくさんあるから。

曽祖父が西鉄バスの運転手であったことは、西鉄に入社して知った。
数十年の時を超えて、同じ会社でしかもバス事業という共通の仕事をしていることに縁を感じる。
私は、バス部門の事業計画などを
経験し、現在は交通政策とMaaSを担当している。
バス利用者の減少、そしてバス運転士の
不足という状況で
これから、バス事業をどう
展開していくのか?
その課題を解決しつつ、新たな移動のあり方を創っていくことが私の仕事だ。
まちづくりを人に例えるなら、建物などの施設が臓器で、バスの路線は血管、人の流れは血流になる。
まちづくりにおいて
は、結局全てが重要であり、繋がっている。
交通も、まちづくりの視点から“暮らしを豊かにするためのもの”として捉えていくと
できることは無限に広がっていく。
AI(人口知能)やIoT、自動運転などのテクノロジーに加えて、脱炭素への取組みなど
モビリティの未来は大きな
可能性を秘めている。
バスの分野は
これから、もっと面白くなっていくと思う。

【まちづくり・交通・観光推進部】 松木 創 MATSUKI SO

2005年上智大学法学部国際関係法学科卒業後、
西日本鉄道株式会社に入社。
バス部門、広報室、経営企画部を経て、まちづくり部門で
地域交通計画および連節バス導入等 の
プロジェクトに従事。2016年に官民交流採用で国交省へ。航空局にて国際条約関係業務に従事。
2018年に復職し、バス部門で事業計画や予算管理、運賃および制度関連業務などに従事。
2022年より現職にて交通政策とMaaSを担当。

MaaSって何?

MaaSはスマホひとつで様々な乗り物の情報や
サービスを連携させ、一括管理
できる仕組みのこと

MaaS(マース:Mobility as a Service)とは、地域住民や旅行者ひとりひとりのトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスです。
電車やバスなどでお客さまをお運びする輸送サービスとは異なり「移動しやすさ」という無形の価値を提供するという考え方で、実現には、交通事業者同士の連携が重要になります。

新しいバスのカタチを創る。

コロナ前の2018年に、AIオンデマンドバス「のるーと」の事業の立ち上げに参画し、事業を立ち上げる際の事業計画書の作成や交渉・協議、意思決定までの仕事に携わりました。「のるーと」は乗りたい時間にアプリで呼べる8人乗りの小さなバスです。乗るところも降りるところもアプリが指定し、バスの待ち時間もチェックできます。バスの利用者が減少している中、コストを抑えながら、効率的に利用者を増やすための事業として始まりました。まずは、福岡市東区のアイランドシティから始めましたが、全国の自治体から関心をいただき、展開エリアを増やしています。デジタルを活用することで、乗車する人のタイミングに合わせることができ、スムーズで効率的な運行が可能です。

運転手が足りないという
課題から見えてきたアイデア。

バスの運転手が足りない中で、交通移動のニーズにどう応えていくかが課題でした。人口が減っていく時代において、潮流としてバスの利用者は減っていく環境にあるかもしれません。ただ、バスのお客さまは高齢の方が多いという統計データがあります。高齢になると移動の目的が変化することもあり、交通手段選択におけるバスの利用率が上がるのです。したがって、人口減にあわせて単純に正比例で需要が減るのではなく、バス利用ニーズは残り続けるだろうと想定しています。しかし、バスの利用ニーズが残り続けていても、運転手が減っていくと、供給が不足し、需要と供給のバランスが崩れてしまいます。そのバランスを調整しようとした時に考え出されたアイデアが、AIオンデマンドバスでした。本来、バスの運転手になるためには大型2種の免許取得が必要になります。しかし、このことが運転手不足の原因のひとつでもありました。もっと身近で普通免許で運転できるサイズダウンしたバスをつくれば、担い手の幅も広がるのではないかと考えました。AIオンデマンドバスは、需要においても、供給においても利用価値の高いバスになると思い、チャレンジした事業です。

運転手不足をマイナスに捉える
のではなく、変化するきっかけとして
プラスに考えることで、
可能性が広がる。

モビリティの観点から実現する未来。

交通の観点からまちづくりを行っていますが、私の役割は、人の流れをつくることだと思っています。まちを人の身体で例えるなら、不動産事業の施設開発は臓器の部分。交通事業における交通のネットワークが血管。人の流れが血流になります。身体にとってどれも必要なことで、まちづくりにとっても同じことです。新しい施設ができても、そこに人が集まらないと、まちとして活性化しません。だから、交通の観点からいかに人流をつくるかということを考えて企画しています。人流を生み出すためには、MaaSやモビリティの考え方が関係します。西鉄は創業から100年以上の歴史があり、鉄道やバスで地域の暮らしを支えてきました。いわゆる輸送という意味を持つトランスポートサービスを展開してきました。トランスポートとは、お客さまの現在位置をA地点からB地点まで移動させることです。これは、駅から駅。バス停からバス停という西鉄が所有する拠点間をつなぐサービスで、限られた中の領域でのサービスになります。これに対して、近年私たちが行っているのが、MaaSの考え方に基づくモビリティサービスです。これは、簡単に言うと「移動しやすさを提供するサービス」ということになります。今後は、トランスポートサービスとモビリティサービスを組み合わせて展開していきます。

移動手段ではなく、移動目的を
創出する。

移動手段には、自転車、バス、電車などがあります。例えば、ひとりの方が出かける際に、駅まで自転車を使い、駅から電車、その後にバスに乗って目的地に到着するとします。その流れの中でどれかが利用しにくければ、その方は今後移動する手段を変更するかもしれません。だから移動しやすさは、部分的ではなく全体を考えたサービス設計をする必要あります。また、一部の例外を除き、移動は目的があって発生します。高度経済成長期などの従来の日本社会においては、人口増と通勤需要に支えられ、移動の総需要は増えていましたが、今は全く違う環境です。人口減に高齢化、テレワークなどにより移動需要そのものが減少しているため、移動の目的をつくっていくということも重要な課題です。

競争から共創へ。移動の質を高め、
移動機会を共につくっていく。

目的地が見つかっても、移動するのが面倒であれば人流は生まれません。「行きたい」と「めんどう」の心の天秤で、「行きたい」に勝ってもらう必要があるんです。だから移動しようと思える目的「行きたい」を創出することと同時に、移動の「めんどう」を軽減する取り組みが必要なんです。そのためには、西鉄だけではなくJRさんなどの他社の移動手段との連携も大切です。乗り継ぎの利便性の改善や地域特性に応じた移動サービス(MaaS)が重要になります。

地域の移動サービスを維持していく
には、他社との連携も必要。
共に創るという考え方が、人の動きを
つくり、まちを活性化させる。
まちづくり企業として、広い視野で
展開しています。

MaaSで開かれていくバスの可能性。

持続可能な社会実現において、バスもEV車両の導入により、脱炭素化を加速させています。欧米では、CO2削減等の観点から公共交通利用の促進を国の政策として強力に推進しています。電車・バス事業は海外では上向き産業ともいえる状況なのです。歩いて楽しい脱炭素のまちづくりの視点で考えると、バスは今後まちの主役になりうると考えています。バスを含む自動車は移動手段としてだけではなく、モノを運んだり、お店になったりと車両自体の多様化も進んできているので、ニーズに応じて色々組み合わせるとバスにできることは今後まだまだあると思っています。

バスの場合、ファーストワンマイルも
大切だと思っています。

物流業界には、ラストワンマイルという言葉があります。ラストワンマイルとは、「お客さまに物・サービスが到達する物流の最後の接点」のことを指します。物品が物流の最終拠点からエンドユーザーに届くまでにどうするか。物流業界では、この配送の負担が課題になっています。ラストワンマイルは交通業界で言えば、お客さまが乗り物に乗って、目的地まで到着するまでのことを示し、物流同様に重要なのですが、バスの場合は、ファーストワンマイルも課題になってくると思っています。バスに乗っていただくきっかけは何か。「バス停までどうやって来ていただくか」など、移動の全体像をイメージしながらサービスを考えることが大切です。当然ながら自社だけで全てを担うことはできませんので、地域の様々なモビリティサービスと連携して取り組むことになります。

人生のターニングポイント

西鉄以外の環境で働いたことで
西鉄のポテンシャルの高さを知った。

2016年、官民交流採用で国交省へ入省し、西鉄以外の環境で働いたことで新しい考え方やモチベーションが芽生えました。国交省では、航空局の国際航空課で国際条約関係業務に従事しました。内容は主に外国航空当局との協議なのですが、国内企業とも意見交換しながら協議の方針を立案し臨みます。民間企業が国のルールメイクに参画していくプロセスを直に経験できたことは刺激的でしたし、自分の中で何か掻き立てられるものがありました。その経験があり、「西鉄はバス事業で業界トップクラスの実績を持つのだから、もっと国のルールメイクに関わることができるのではないか」という想いが芽生えました。国交省に入省したことで、西鉄には、業界のトップランナーとして幅広い可能性があることを再認識することができました。そういった強い想いもあり、バス部門への復職を志願し、今に至っています。西鉄は業界の雄であり、ポテンシャルもあるけど、あまりリーダーっぽくしていないところ、嫌いじゃないです(笑)。